空飛ぶ円盤ブルース

両隣外によるブログです。

リズムのリズム Dr. John→YMO→Afrika Bambaataa →J Dilla

 ヒップホップの世界では、J Dilla(Jay Dee)というデトロイト出身のプロデューサーの登場が、その後のビートのリズム感に大きな影響力を与えた事は明白だ。
J Dilla - The Clapper (2001年)

 彼はビートを作る際、自身の身体感覚を元に、均等なリズムから絶妙にタイミングをズラした「ヨレた」リズムでビートを組んだ。
それまではビートを作る際、機材に備わっている機能を使いメトロノームのように正確で均等なリズムを作る事が主流だったのだ。
もちろん均等なリズムでもグルーブ感(ノリ、踊れるかどうか)は出せるのだが、J Dillaが生み出すヨレたリズムは強力で、そのグルーブ感はスリリングでさえある。

 ヒップホップの世界ではヨレたリズムの歴史はまだ浅いが、生演奏の音楽の場合、ヨレていない音楽の方が珍しい。と言うのも、どれだけ演奏者が正確に演奏したところで、人間が演奏している限り、絶対に均等なリズムでは演奏できないからだ。
 ヒップホップではサンプラーやリズムマシンといった機械を使う事が主流なので、逆に正確なリズムを打ち出せる機械を使って、正確ではないリズムを生み出す事が新しかったのだ。


 生演奏でヨレたリズムが強烈な音楽の一つに、ニューオリンズの音楽がある。
Huey "Piano" Smith - High Blood Pressure (1958年)

Dr. John - Blow Wind Blow (1972年)

独自のピアノのフレーズと、シャッフルのリズムと8ビートの中間くらいを行くビートの独自のグルーブ感。

 このリズム感を意識的に自身の音楽に取り入れた日本のミュージシャンと言えば細野晴臣氏だ。
細野晴臣 蝶々-san (1976年)

細野さんも自身の著作で触れているが、この曲の入っているアルバムはニューオリンズのリズムを意識している。
冒頭、ニューオリンズ風のドラムの次に鳴りだす音が、サンシンとウクレレが合体したような謎の楽器、という所がいかにも細野さんらしい(笑
この曲が一曲目のアルバム『泰安洋行』は怪盤かつ名盤で、これは当時売れなかっただろうなー。とつくづく感じる。

 後に細野さんはYMOの中で、坂本龍一氏と高橋幸宏氏と共に、機械の均等なリズムと、機械による「ヨレた」リズムの再現というグルーブの探求を続けるのだが、こっちは世界的に売れた。
④グルーブのないリズムの追求

世界的に売れた事で、意外な所に影響が行くことになった。
 ヒップホップの生みの親の一人であるAfrika BambaataaYMOを好きで、DJの時にYMOの曲をプレイしていたのだ。
そういった影響もあって初期のヒップホップにはYMOKraftwerkなどのテクノ・ポップの影響が強い。
Afrika Bambaataa - Looking for the Perfect Beat (1983年)

このビデオ凄いな(笑

 初期のヒップホップはYMO等に影響を受けながらも、リズムマシンによる均等なリズムからスタートしたが、およそ20年かけてJ Dillaに代表される、機械によるヨレたリズムに行き着いた。。。

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つくづくリズムは寄せては返すものなんだな、とニューオリンズジャズの演奏会を観に行って感じた一日だった。

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