空飛ぶ円盤ブルース

両隣外によるブログです。

空飛ぶ円盤ブルース ジミヘンとホアン・アトキンス


 UFO、宇宙、エイリアン…
 これらSFネタには多くの人を惹きつける魅力がある。
 しかしよく考えると、その魅力にはいくつかタイプあるように思う。
 大雑把に以下の4つかなと考えてみる。

  [陰謀、謎追い型]:政府はUFOに関する事実を隠している
  [恐怖、侵略型]:火星人が侵略にやって来た
  [キャラ、着ぐるみ型]:ETと友達になりたい
  [思いを馳せる型]:しがらみだらけこことは違う、別世界があるのでは

 映画や小説などの分野では[陰謀型]や[侵略型]の作品も多いが、
 ポピュラー音楽の分野では、[キャラ型]と[思いを馳せる型]、またその中間の作品がほとんどだと思う。

  [キャラ型]
   ピンクレディー「UFO」、Space「Magic Fly」etc...
  [キャラ、思いを馳せる型の中間]
   Parliament「Mothership Connection」、YMO「U.T」、
   Afrika Bambaataa「Planet Rock」etc...
  [思いを馳せる型]
   Jimi hendrix「EXP」、Model 500「No Ufo's」etc...
 
 どのタイプも好きだけども、個人的には思いを馳せる型が一番好きだ。

  Model 500「No UFO's」

  They say, “There is no hope”
  希望はないと言う

  They say, “No UFOs”
  UFOはいないと言う

  Why is no head held high?
  それなら何故、おまえは高みを見ようとするのか

  Maybe you’ll see them fly…
  やがておまえは飛ぶのを見るだろう
  飛べ! 

    和訳(http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/SonyTechno/feature/9903/model500/liner1.html)より

 Model 500はデトロイトテクノの創始者ホアン・アトキンスJuan Atkins)の別名義だが、希望とUFOが同列になっている所が面白い。今自分が生きている日常とは別世界の象徴としてのUFO。

 Jimi Hendrix「EXP」

 この曲はラジオでのインタビュー仕立てになっていて、ドラマーのミッチミッチェルがラジオ司会者として、ジミヘンが変な見た目のポールクルーソーという男の役で出てくる。
 
 ポールクルーソーが、空飛ぶ円盤や宇宙人を小バカにするラジオ司会者に対して
「お前は目に見えるものや聞こえるものしか信じないんだろ。ちょっと失礼。」と言い捨て、いきなりUFOに乗って離陸して行ってしまう(ここでエレキギターの音でUFOの離陸音を、頭の上をグルグルと旋回する様子をステレオ効果で表現している)。

 ジミヘンが異界から来たエイリアンで「見えるものや聞こえるもの」しか信じない周囲の一般人に対して実際に飛ぶ、という役を演じている所が、現実のジミヘンが周囲に感じていたことの代弁なのではと思う。
(ポールクルーソーという名は、無人島に漂着し近隣の異邦人を従えて生活したロビンソンクルーソーを連想させる)

 ジミヘンもホアン・アトキンスも、自らの持つブルースを、エレキギターやリズムマシン、シンセといったテクノロジーをフルに使い、こことは違う別世界、異界、憧憬、希望の象徴であるUFOや宇宙に思いを馳せ、そこへ向けて音楽的に飛び立ったパイオニアだ。
 彼らにとってUFOや宇宙は身に迫った切実な問題であり、絵空事であり絵空事では無いのだ、と彼らの音楽からはそういった衝動がヒシヒシと伝わってくる。

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 1947年、アメリカで有名なUFOの目撃事件が起き「空飛ぶ円盤」という言葉が生まれて間もなく、ラジオ局の宣伝係が「空飛ぶ円盤ブルース」という歌を呼び物としてラジオ番組を売り込んだそうな。
空飛ぶ円盤、ブルース…
 
 この曲はどんな曲だったのか?調べればどんな曲か分かるはずだ。
が、今はあれこれ調べずにその曲に思いを馳せてみる。

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