空飛ぶ円盤ブルース

両隣外によるブログです。

邦題『世界は日の出を待っている』

先日ニューオリンズジャズの演奏会で聴き、いい曲だなーと思った『The World Is Waiting for the Sunrise』(邦題『世界は日の出を待っている』)という曲。
作曲が1919年なので100年近く昔の曲なのか…

The World Is Waiting for the Sunrise

このLes Paul & Mary Fordバージョンがヒットしたようだ。
うーんどういった状況なのか良く分からない曲の始まり(笑
レス・ポールは奥が深すぎる人なので、聴き応えのある人だ。
歌手で奥さんのマリー・フォードとやってたテレビショーからの映像の様子。

Del Casher "The World is Waiting for the Sunrise"

バンジョーで弾きまくり。そして笑顔。

Banjo solo" The World Is Waiting For The Sunrise"by Ken Aoki

日本人バンジョーで弾きまくり。そして凄みのある笑顔(笑
心底バンジョーが好きなのが伝わって来て嬉しくなる。

The World is Waiting for the Sunrise with Lots of Effects

謎のグラサンおじいちゃん(?)Featureman さんによるバージョン。
これもかなり楽しそうだ(笑

癖のある人が好む曲なのか?と思ったら、この曲は100以上の録音のバージョンがあるそうな。むむむ。
思わずみんながカバーしたくなる、いい曲だ。
メモメモ。

リズムのリズム Dr. John→YMO→Afrika Bambaataa →J Dilla

 ヒップホップの世界では、J Dilla(Jay Dee)というデトロイト出身のプロデューサーの登場が、その後のビートのリズム感に大きな影響力を与えた事は明白だ。
J Dilla - The Clapper (2001年)

 彼はビートを作る際、自身の身体感覚を元に、均等なリズムから絶妙にタイミングをズラした「ヨレた」リズムでビートを組んだ。
それまではビートを作る際、機材に備わっている機能を使いメトロノームのように正確で均等なリズムを作る事が主流だったのだ。
もちろん均等なリズムでもグルーブ感(ノリ、踊れるかどうか)は出せるのだが、J Dillaが生み出すヨレたリズムは強力で、そのグルーブ感はスリリングでさえある。

 ヒップホップの世界ではヨレたリズムの歴史はまだ浅いが、生演奏の音楽の場合、ヨレていない音楽の方が珍しい。と言うのも、どれだけ演奏者が正確に演奏したところで、人間が演奏している限り、絶対に均等なリズムでは演奏できないからだ。
 ヒップホップではサンプラーやリズムマシンといった機械を使う事が主流なので、逆に正確なリズムを打ち出せる機械を使って、正確ではないリズムを生み出す事が新しかったのだ。


 生演奏でヨレたリズムが強烈な音楽の一つに、ニューオリンズの音楽がある。
Huey "Piano" Smith - High Blood Pressure (1958年)

Dr. John - Blow Wind Blow (1972年)

独自のピアノのフレーズと、シャッフルのリズムと8ビートの中間くらいを行くビートの独自のグルーブ感。

 このリズム感を意識的に自身の音楽に取り入れた日本のミュージシャンと言えば細野晴臣氏だ。
細野晴臣 蝶々-san (1976年)

細野さんも自身の著作で触れているが、この曲の入っているアルバムはニューオリンズのリズムを意識している。
冒頭、ニューオリンズ風のドラムの次に鳴りだす音が、サンシンとウクレレが合体したような謎の楽器、という所がいかにも細野さんらしい(笑
この曲が一曲目のアルバム『泰安洋行』は怪盤かつ名盤で、これは当時売れなかっただろうなー。とつくづく感じる。

 後に細野さんはYMOの中で、坂本龍一氏と高橋幸宏氏と共に、機械の均等なリズムと、機械による「ヨレた」リズムの再現というグルーブの探求を続けるのだが、こっちは世界的に売れた。
④グルーブのないリズムの追求

世界的に売れた事で、意外な所に影響が行くことになった。
 ヒップホップの生みの親の一人であるAfrika BambaataaYMOを好きで、DJの時にYMOの曲をプレイしていたのだ。
そういった影響もあって初期のヒップホップにはYMOKraftwerkなどのテクノ・ポップの影響が強い。
Afrika Bambaataa - Looking for the Perfect Beat (1983年)

このビデオ凄いな(笑

 初期のヒップホップはYMO等に影響を受けながらも、リズムマシンによる均等なリズムからスタートしたが、およそ20年かけてJ Dillaに代表される、機械によるヨレたリズムに行き着いた。。。

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つくづくリズムは寄せては返すものなんだな、とニューオリンズジャズの演奏会を観に行って感じた一日だった。

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SoundCloudに挑戦

古いファイルを整理していた所、以前勢いで制作したものの、そのまま放置されていた曲を発見。

このままお蔵入りするのも哀しいので、以前から気になっていたSoundCloudへのアップロードに挑戦。
http://soundcloud.com/soto-ryoudonari/insidefunk

このブログに貼付ける事にも挑戦…

うまくいくか?…いった!

「InsideFunk」という曲名にしました。
ファンクといっても大分偽物ですが(笑

中古CD屋、もしくはゴールデンタイム

今日は久しぶりにお茶の水の中古CD屋へ。
気になっていたCDがいい具合、いい値段で置いてたので3枚購入。
いやあ、ディスクユニオンは裏切らないね(涙

CD屋をうろうろ、目移りしながらも何点か購入

喫茶店で買ったCDのジャケやライナーを眺めながら中身を想像

買ったCDにスポッと心が入ったまま帰宅

プレイヤーから再生される初めの音が耳に張り付く

ジーン…

というサイクルが自分の愉しみである(笑


アマゾンやデータ配信も利用するが、中古CD屋文化が自分は好きだ。

内容が良いものは値段が落ちず、内容はイマイチのものは値段も低め。
かと言って値段の低めの中にも、キラり光る良い内容のものもある。
本来自分が買おうと決めてきたCDよりも、偶然買った500円以下のCDのが良い事なんてザラにある。その出会いが面白い。

またCDという物だと、手に取ってから実際に音を聴くまでに時間がある。
データだと時間差はほとんど無いし、アマゾンだと数日かかってしまう。
買ってすぐではないが、当日には聴けるくらいの時間が心地よい。

ある意味、買ってから実際に聴くまでのこの時間が一番楽しいゴールデンタイムかもしれない。実際に内容が良かった場合は、それはそれでとても豊かな時間なのだが、休日当日よりも、前日の夜が一番楽しかった事は小学校の頃から繰り返し経験している真実だ。

数年後は分からないが、このゴールデンタイムを想像力を働かせ楽しむ、という遊びにまだ飽きておらず、楽しめる余裕があるので、しばらくは中古CD屋い通う日々は続きそうだ。
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ちなみに本日購入のCD、聴きながらこの記事を書いているが、ゴールデンタイムの自分の軟弱な想像を上回る、素晴しい内容だ。
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空飛ぶ円盤ブルース ジミヘンとホアン・アトキンス


 UFO、宇宙、エイリアン…
 これらSFネタには多くの人を惹きつける魅力がある。
 しかしよく考えると、その魅力にはいくつかタイプあるように思う。
 大雑把に以下の4つかなと考えてみる。

  [陰謀、謎追い型]:政府はUFOに関する事実を隠している
  [恐怖、侵略型]:火星人が侵略にやって来た
  [キャラ、着ぐるみ型]:ETと友達になりたい
  [思いを馳せる型]:しがらみだらけこことは違う、別世界があるのでは

 映画や小説などの分野では[陰謀型]や[侵略型]の作品も多いが、
 ポピュラー音楽の分野では、[キャラ型]と[思いを馳せる型]、またその中間の作品がほとんどだと思う。

  [キャラ型]
   ピンクレディー「UFO」、Space「Magic Fly」etc...
  [キャラ、思いを馳せる型の中間]
   Parliament「Mothership Connection」、YMO「U.T」、
   Afrika Bambaataa「Planet Rock」etc...
  [思いを馳せる型]
   Jimi hendrix「EXP」、Model 500「No Ufo's」etc...
 
 どのタイプも好きだけども、個人的には思いを馳せる型が一番好きだ。

  Model 500「No UFO's」

  They say, “There is no hope”
  希望はないと言う

  They say, “No UFOs”
  UFOはいないと言う

  Why is no head held high?
  それなら何故、おまえは高みを見ようとするのか

  Maybe you’ll see them fly…
  やがておまえは飛ぶのを見るだろう
  飛べ! 

    和訳(http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/SonyTechno/feature/9903/model500/liner1.html)より

 Model 500はデトロイトテクノの創始者ホアン・アトキンスJuan Atkins)の別名義だが、希望とUFOが同列になっている所が面白い。今自分が生きている日常とは別世界の象徴としてのUFO。

 Jimi Hendrix「EXP」

 この曲はラジオでのインタビュー仕立てになっていて、ドラマーのミッチミッチェルがラジオ司会者として、ジミヘンが変な見た目のポールクルーソーという男の役で出てくる。
 
 ポールクルーソーが、空飛ぶ円盤や宇宙人を小バカにするラジオ司会者に対して
「お前は目に見えるものや聞こえるものしか信じないんだろ。ちょっと失礼。」と言い捨て、いきなりUFOに乗って離陸して行ってしまう(ここでエレキギターの音でUFOの離陸音を、頭の上をグルグルと旋回する様子をステレオ効果で表現している)。

 ジミヘンが異界から来たエイリアンで「見えるものや聞こえるもの」しか信じない周囲の一般人に対して実際に飛ぶ、という役を演じている所が、現実のジミヘンが周囲に感じていたことの代弁なのではと思う。
(ポールクルーソーという名は、無人島に漂着し近隣の異邦人を従えて生活したロビンソンクルーソーを連想させる)

 ジミヘンもホアン・アトキンスも、自らの持つブルースを、エレキギターやリズムマシン、シンセといったテクノロジーをフルに使い、こことは違う別世界、異界、憧憬、希望の象徴であるUFOや宇宙に思いを馳せ、そこへ向けて音楽的に飛び立ったパイオニアだ。
 彼らにとってUFOや宇宙は身に迫った切実な問題であり、絵空事であり絵空事では無いのだ、と彼らの音楽からはそういった衝動がヒシヒシと伝わってくる。

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 1947年、アメリカで有名なUFOの目撃事件が起き「空飛ぶ円盤」という言葉が生まれて間もなく、ラジオ局の宣伝係が「空飛ぶ円盤ブルース」という歌を呼び物としてラジオ番組を売り込んだそうな。
空飛ぶ円盤、ブルース…
 
 この曲はどんな曲だったのか?調べればどんな曲か分かるはずだ。
が、今はあれこれ調べずにその曲に思いを馳せてみる。

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